コラム

札幌動物行動クリニック S.A.B.C Blog コラムの続きはこちら

ねこちゃんのお話

 今までの問題行動についてのお話は、ワンちゃんにも猫ちゃんにも共通するお話でしたが、例をあげていたのは主に、ワンちゃんでした。今回からは猫ちゃんのことをお話しようと思います。
 猫の問題行動として、ここ、札幌動物行動クリニックで一番問題になるのが、同じ家の中に暮らしている猫同士が喧嘩を始めてしまうというものです。そして、その次に飼い主さんに対しての攻撃行動、そして排泄問題と続きます。そこで猫ちゃんの一般的なお話から問題行動までをお話しようと思います。
 このコラムを読んで下さっている方で、猫ちゃんの飼い主の方はどのくらいいらっしゃるかわからないのですが、猫ちゃんについてはワンチャンほに関係する本ほど、多くはありません。ワンちゃんを飼っていらっしゃる方も猫ちゃんのことについても「犬とはちがうのね」と感じてもらいたいのと、猫ちゃんについては、飼い主さんでさえあまり気がつかないことが多いように思います。
 「犬」と「猫」は全く違う進化をしてきた動物です。現在は同じ「ペット」とという枠の中に存在していますが、「家畜化」の歴史でくらべると1万年くらいの違いがあります。もちろん犬の方が古いのです。そもそも「猫」が人間の側で暮らし始めたのは、人間が農耕を始め、穀物を倉庫にためるようになってからと言われています。つまり、倉庫につき物の「ネズミ」を獲物とするためです。このように猫は自ら「家畜化」された動物とも言われています。ここが「犬」とはもう違っているのです。「犬」はある特定の仕事をさせるためにその姿や形、毛並み、毛色などを変える必要がありました。たとえば、ボーダーコリーは牧羊犬、ゴールデンは狩猟を手伝うため、といったふうに。ですが、「猫」の場合はそうではなく、もともと「猫」が行っていた、「獲物を狩る」という行動を人間が利用して、「猫」もその見返りとしてご飯をもらうということから人間との付き合いがスタートしています。ですから、「猫」は「犬」のように大きさの違いや。顔の違いがありません。違いを人間が作る必要がなかったのです。もともとエジプト人が「猫」の家畜化に成功し、神聖な動物としてとても大切にしていました。それが、エジプトがローマに攻められた結果、世界に「猫」が広がっていったのです。
次回は「猫」についてさらに詳しくお話します。

 猫ちゃんのお話をつづけましょう。

 世界に広まっていった「猫」。その後はどうなっていったのでしょうか。「猫」たちはエジプトの時代から、自分達の縄張りを守り、獲物を獲り、といった生活をしていたのですが、この生活が人間にとって不思議な生き物と映った時代がありました。「猫は悪魔の化身」「化け猫」などの印象が悪く嫌われ者になったのです。この時代は「猫」達にとってほんとにつらい時代だったといえるでしょう。たくさんの「猫」たちが意味も無く命を絶たれたのですから。これは、早くから家畜化された、「犬」と違って人間は「何を考えているかわからない動物」と感じたからではないかと言われています。いずれにしても「猫」にとってはいい迷惑です。そんな時代も経て「猫」の魅力を人間が理解し、今のような時代になったのです。「猫種」は「犬種」と違って仕事をさせるために変化させたわけではないので、能力に違いがあるということはありません。若干の性格の違い等はありますが、基本的には「猫」なのです。
では、「猫」という動物はいったいどんな生き物なのでしょうか?
「猫」は基本的には「単独で縄張りを持つ動物」です。犬は群れを作る狼が祖先と言われていますから、ぜんぜん進化の過程が違う動物だということがここでおわかりになると思います。そして、単独で狩りを行う動物だということも「犬」とは異なります。このように見てくると、「猫」の思考が見えてきます。
次回は、もっと深く「猫」というものを見ていきましょう。
猫」という動物に興味が出てきましたか?さらにお話を続けましょう。

 前回までのお話で、「猫」は「犬」と比較すると人間とのお付き合いが短く、改良もさほど行われなかったことがわかりました。では、実際に「猫」という動物はいったいどんな動物なのでしょうか?

・基本的には、単独で縄張りを持ち、狩りをして生活していく動物
 ですが、他の動物を受け入れないということは無く、条件がそろえば集団でも生活はできます。その条件とは「エサの量」なのです。よく外で暮らしている「猫」達が集団でごはんを食べている光景を目にすることがあります。自分達が食べてもまだあまっっているようであれば、新しい猫がきても受け入れることができますが、自分達だけで精一杯の量しかない場合は、他の猫を受け入れません。

・自分の「匂い」を確認して1日を終わりたい
 家の中で暮らしている猫も、外で暮らしている猫も基本的な行動のパターンは共通しています。それは「自分の匂い(縄張り)の確認」です。家の中の猫のお気に入りの場所が1日のうちでも変化して決まっていることに、飼い主さんなら気がついていることでしょう。そして、机の角、壁、などに体をこすり付けているのもおわかりだと思います。これは自分の匂いをつけて縄張りを確認している作業です。ですから、家具の配置が変わったり、あたらしく大きな家具を入れたり、カーテンなどを替えたりすると、落ちつかなくなったりするのは自分の匂いの位置が変わったり、自分の匂いがしないものが来るせいだと言われています。外で暮らしている「猫」たちがだいたい同じような時間に、同じような場所にいるのもそのせいだと言われています。

・飼い主さんとの関係は「親子」
 「犬」は元来群れで暮らす「オオカミ」が祖先といわれているため、飼い主さんのことを「リーダー」と見て信頼していく動物ですが、「猫」の場合とくに家の中だけで暮らしている「猫」は飼い主さんのことを「親猫」として見るといわれています。それは、一人前になって「狩猟」をせずともご飯をもらって生活できるからでしょう。ですからたまに鳥を捕まえたりして飼い主さんのところに持ってくることがあるのは「ほら、つかまえることできたよ」とお母さんに言っているのかもしれません。

この続きは次回に


前回は、「猫」という動物はどういう思考をもっているかということをお話しました。今回はその思考がもとで起きる問題行動についてお話します。

 「猫」は単独でなわばりを持ち、自分の匂いを確認して1日を終えるということが基本です。ですがここで思わぬ事態が起こると一変します。
 こんなことがありました。飼い主さんの膝の上にゴロゴロしている「猫」がいました。ここで大きな地震がやってきたのです。飼い主さんは慌てて立ち上がり、台所へ火の元を確認に行きます。この時「猫」は自分の周りで様々な音が鳴っているのをじっとしながら聞いています。戸棚がガタガタいって、中の食器が揺れて音なっています。テーブルの上の食器が揺れて下に落ちました。そしてガラスが割れたのです。この様子も「猫」はじっと確認しています。揺れが少し収まったところで、電話がなりました。突然の電話の音にお母さんもおどろきました。地震があったことを心配して、親戚の人が電話をしていきたのです。そして、遠くから救急車のサイレンも聞こえました。「猫」はこの様子も押入れの隅からじっと見ていました。この後揺れは完全に収まり、「猫」はゆっくり押入れから出てきました。そして毛づくろいをはじめました。飼い主さんもようやく落ち着いて、ソファに座りました。そこへ再び地震が来たのです。そう余震でした。飼い主さんは余震だとわかり、今度はさほど慌てずにソファで座って揺れが収まるのを待とうと思っていたところ、「猫」が突然パニックになったように暴れ回り、お母さんに攻撃をしたのです。非常に激しく興奮した様子でした。このときの「猫」の様子はいつもと全く違っており、お母さんが少しでも動こうとすれば、攻撃しそうな勢いでした。お母さんは非常にびっくりしましたが、地震のせいでパニックになったとわかり、揺れがおさまるまでじっとソファの上から動かなかったのです。揺れがおさまるとしばらくは興奮していた様子でしたが、なんとか落ち着きを取り戻したのです。その後は余震もなくお母さんは一安心しました。
次の日になって、いつもどおりお母さんは台所でお茶碗を洗っていました。そこへ電話がなりました。お母さんは考え事をしながら洗っていたので、びっくりしてお茶碗を落としてしまったのです。「猫」はふたたびパニックになりました。お母さんを興奮しながら攻撃したのです。お母さんは動けずにそのままの姿勢でいるしかありませんでした。電話が鳴り終わるまで、「猫」のパニックは治まりませんでした。ここからこの「猫」の行動が少しずつ変化していったのです。
この続きは次回に
お母さんは少しこの「猫」のことが怖くなっていました。それは一度パニックになると、目つきも変わり攻撃を激しく行うようになってしまったからです。しかし、、その後は特に問題が無く4日が過ぎました。遠くから救急車のサイレンの音が聞こえてきました。すると「猫」の様子がだんだんとおかしくなっていったのです。初めは耳を頻繁に動かして、あたりの様子をうかがっているようでした。体勢は低く耳もぺったりと後ろに下がって見えました。そしてサイレンの音が、近くになってくると興奮も始まりお母さんをぎっとにらんで動くと攻撃するいつものような感じになってきました。ここで以前と状況が違うのは、お父さんもいっしょにいたと言う事です。でもお父さんには全く攻撃的な様子はなく、狙いはお母さんに集中していたのです。お母さんはサイレンの音が小さくなるまでじっとして動かないようにしていました。そしてしばらくすると、今度は電話がなったのです。ここでふたたびパニックになりました。お母さんは怖くなって、「猫」が飛び掛ってくる寸前に部屋を出ました。残されたお父さんには別に攻撃する様子はありませんでしたが、興奮しているのはわかりました。しばらくするといつもの「猫」にもどったように見えたので、お父さんは「猫」をキャリーケースに入れて、別の電気のついていない部屋へとそっと置きました。お母さんは「猫」が部屋にいないことを確認すると、ようやく戻ってきたのでした。こんな状況だとまたいつ襲われるかわからないので、一緒に暮らしていくことが不可能かもしれないとお母さんは思いました。でも、3年も一緒に暮らしてきた「猫」と別れるのはつらいと感じ、当院に来院されました。
カウンセリングの中でいろいろとわかってきたことがありました。
そのお話は次回に
地震があった時から、様子がおかしくなってしまった「猫」のお話の続きです。
自宅で飼っていた「猫」に攻撃されはじめたお母さんがここにやってきたのは、初めて攻撃された地震のあった日から2週間後のことでした。キャリーケースの中の「猫」は非常におとなしく、攻撃的な感じをいっさい受けませんでした。この「猫」はメスで避妊手術を受けています。歳は3歳です。
家の中では地震のあった日以前にもお母さんのことを攻撃したことがあったそうです。それは、遊んでいる最中に突然かぷっと手をかじるといったものでした。でもこれに関してはさほど痛くもないし、じゃれているだけなので気にしていなかったということです。そのほかの問題はとくにありませんでした。トイレもきちんと使っていて、粗相もしたことはありませんでした。ただ、音に対して、敏感なところがあったとお母さんは言っていました。
ここで、この「猫」がお母さんに攻撃をするきっかけを与えてしまう引金を整理してみましょう。
・地面が揺れる音
・ガラスの割れる音
・救急車のサイレン
・電話の音
おおまかなところはこんなところでしょうか。でも、これだけではありません。大切なのは、「お母さん」というキーワードです。攻撃の対象がお母さんだけというのがその理由です。これはどうしておこるのでしょうか。それは「猫」の思考と関係があるのです。
「猫」は物事を複合的にとらえる動物です。ですから、地震があったときに恐怖を感じ、パニックになった一瞬のうちに様々な状況を理解していまうのです。これは本能的なものだと言えるでしょう。この「猫」の場合「お母さん」も恐怖の条件に入ってしまったために、恐怖を感じた時の攻撃がお母さんにしか向かなかったのです。たとえ、お父さんといっしょにいたとしても。
では、このパニックに対してどのように対処していくのかは次回に。
パニックになってしまう「猫」の続きです。
 様々な条件によって引き起こされるパニックについて、どのように対処していくかを説明していきます。
 当然こういう状況に極力させないことがいいのですが、お母さんが条件に含まれるということですから、いつパニックになってもおかしくないのです。そこで、3段くらいの背の高い猫用のケージを用意してもらいました。これにはお母さんの「猫」に対する恐怖心も取り除くことも目的の一つでした。また、これにより、「猫」にとっては安心できる逃げ場所ができ、そこから様々な状況を再び認識させるという作業がしやすくなるからです。まず、このケージの中でご飯を与えて、そこが自分の場所であることを解らせていきます。このとき決して無理はさせずに最初は中を存分に探検させ、自分の匂いをつけさせてあげましょう。そして、一通り匂いをつけたところで、ご飯を与えます。このとき、確実にご飯をその中で食べてもらうために、少しお腹を空かせておくことも効果があるでしょう。
 この「猫」の場合もこのケージを気に入ってくれました。そしてこの中にいるととてもリラックスしているようでした。このケージに慣れるまでの約1週間はなるべく電話の音やその他の刺激を与えないように注意してもらいました。また、薬物療法も同時に始めました。この場合もパニックを抑える目的で選択的セロトニン再吸収阻害薬を使用しました。この薬についての詳しい解説は、過去コラムの「不安症」に出ています。
薬物療法と環境を変化させることを2週間行った後から、いよいよパニックを引き起こす原因となる音に対する脱感作を開始します。
お母さんとこの「猫」はまた、元のようにうまくいくようになるでしょうか?
この続きはまた次回に
大きな地震からパニックになってしまった「猫」ちゃんの話をつづけましょう。
3段のケージに入って、落ち着く場所を得た「猫」ちゃん。そのほかに薬物療法もはじめました。かなりリラックスした様子になったので、ここからパニックになる原因についての脱感作を始めます。まず、もう一度パニックになる原因を復習してみましょう。
・地面が揺れる音
・ガラスの割れる音
・救急車のサイレン
・電話の音
以上が、原因になっていたので、これらの音を小さいボリュームから聞かせていきます。今は、「効果音」のCDが市販されていますから、これらを使っても良いと思います。小さいボリュームで聞かせながら、ケージの中でその「猫」が大好きな食べ物を与えます。この時に大切なのはこれらの音を聞いてパニックにならない音量から初めるということです。そして、一日ずつボリュームを上げていきましょう。また、「猫」の聴覚は非常にするどいので、音が聞こえてくる方向を考えて音を流してください。できれば「猫」がいる部屋ではない部屋の窓側から聞こえるようにするのがいいでしょう。でも「猫」の反応をみながらというところもポイントです。もし、様子がおかしくなったらすぐにその音を止めて、落ち着かせてから大好きな食べ物を与えて終了してください。次の日は今まで大丈夫だったボリュームからもう一度始めます。これを繰り返して本物の音に近いところまでボリュームをあげましょう。これができるようになってから、この音を聞かせながら窓を開けて本物の音を聞かせましょう。これで反応しないようなら、脱感作は終了です。ここからお薬を減らしていきます。この「猫」ちゃんの場合もお薬を減らす段階にきました。そこで、まずは3分の2の量にしてみたところ、特に大きな変化も無く音を聞いてたので、さらに2分の1そして、ゼロになりました。これでも特に反応がなかったので、今回の脱感作は終了になりました。ちなみに電話の音は変えてもらってからその音に対して脱感作の方法をとりました。
今は穏やかに生活していてます。このままうまくいくと良いのですが。
次回は、「猫」の問題行動パート2として、「排泄問題」をクローズアップしたいと思います。お楽しみに。
物音でパニックになるネコちゃんのお話は前回で終了しました。ここからはネコちゃんの問題行動で多い「排泄問題」のお話です。この問題は具体的に言うと、
・排尿、排便がトイレ以外の所でおこなわれる
・尿スプレーを含むマーキング
の2種類があります。この排泄問題が出てきたときには、まず、内科的な問題が無いかどうかを確かめることが必要になります。というのも排泄問題には腎臓や膀胱、などの泌尿器や直腸などの病気により引きこされることが多いからです。ですから、まず必要な検査を受けてください。血液検査や尿検査、超音波検査などです。これらの検査によって内科的に異常がなければ精神的な問題から排泄問題が起こっていると言えるでしょう。では、排尿なのか尿スプレーなのかはどうやって見分けるのでしょうか。この尿スプレーはオスでもメスでも行われます。排尿は水平面にスプレーは垂直面に行われると理解するとわかりやすいかもしれません。スプレーは尻尾を上に上げてお尻をふるわせるようにしながら、臭いの強い霧状の尿をふわっと壁にかけていきます。排尿時はお尻を落としてトイレの砂の上におこないます。
では、排尿や排便が適切に行われない原因から見ていきましょう。
まず、トイレの場所を変更したり、砂の種類などを変えていないか確認してください。砂の種類を変更しただけでもそのトイレを使用しなくなることもあります。注意してください。また、トイレの形も変えていないですか?これも原因になることがあります。そして、トイレの数も問題になります。ネコにとって快適なトイレの数はネコの数プラス1個と言われています。もう一つ用意しても良いでしょう。
トイレに問題が無いとすると排泄場所を違える理由は何らかのストレスあるいは、トイレ自体の認識がうまくできなくなった、他に感触のよい場所を見つけたなどがあげられます。「ストレス」は尿スプレーにも関係しています。次回はさらに原因をさぐっていくヒントになることを説明していきます。
「猫」の排泄問題のお話を続けましょう。内科的な問題も無く、避妊や去勢の手術もうけていて、トイレも変更していないのに排尿や排便を別な場所におこなっているとすると、何らかのストレスが原因となっている可能性があります。では、「猫」にとってストレスにつながることは何でしょうか?「猫」のお話の最初の方で「猫」の習性や本能について説明しました。詳しくは、過去のコラムを参照してください。ここにヒントが隠されています。まず、排泄を行っている場所を確認してください。特定の場所で行っていますか?それともあちこちに、しかも新しく置いたものにしていますか?
もし、特定の場所であれば
・新たな猫(外を今までいなかった猫)が通るように様になった
   (その場所が窓や室内の道路側の壁に集中しているようであれば)
・部屋の模様替えをおこなった
・新しく家具を買い換えた
・今まで使っていた「猫」用の食器などを新しくした
・新しく動物を飼った、家族が増えた
などが原因として考えられます。この場合排尿を行っている場所が2~3ヶ所程度であれば、その場所で食べ物を与えることも有効かもしれません。また、猫のフェイシャルフェロモンの製剤が動物病院で市販されていますから、そのスプレーを排泄している所にかけておくのも効果があることが多いです。ただし、これらの処置を行う前に必ず新しいものに対する認識を良いものに変える「脱感作」を行うことが大切です。いくら、食べ物やフェロモンのスプレーを行っても、原因が取り除かれなければまちがった所への排泄は続きます。新たな外猫の存在でマーキングをおこなっているのだとすれば、庭などに入ってこさせない工夫が必要かもしれませんし、新しく家族が増えたのであれば、その人から食べ物をもらったりしなければ慣れていかないでしょう。新しく猫を飼ったのであれば、きちんとあわせないとストレスが増すことがあります。次回は新しく猫を飼ったときのあわせ方と、あちこちで排尿してしまった場合のお話に進みます。
猫」のお話の続きです。
ある程度決まったところへの排尿および、尿スプレーは前回のコラムで大体の原因をお話しました。そこにあった「新しく猫を飼った」ということでマーキングがおこっているのであれば、どのうようにしたらマーキングや不適切な排尿が行われずに、うまく「猫」同士をあわせることができるのでしょうか?ここで、大切なのはこのコラムの最初の方でお話した「猫」の仲間を受け入れる条件を思い出してほしいのです。それは、食料と血縁関係ということです。この場合、新しい猫ですから血縁関係は無いので食料をうまく使ってあわせていくのが、一番良いでしょう。でも、これにもちょっとしたコツがあります。まず、新しい「猫」がうちにやってきたらいきなり先住の「猫」とあわせるのではなく、新しい「猫」に家の中を自由に匂いを嗅がせたり、確認させましょう。この時に先住の「猫」は別の部屋にいてもらいます。こうしておかないと、「猫」同士の確認のタイミングがずれてしまうからです。一通りあたらしい「猫」の確認が終わったところで、いよいよ対面となるのですがこのときに大切なのが、食べ物なのです。ですから先住の「猫」には少しお腹を空かせておくとより効果的です。食べ物を与える時にまず部屋の両端に食べ物を置いて、それぞれに食べさせます。この日はこれで終了。その次の日は前の日より二人を近づけさせて食べ物を与えます。この食べている時間以外は、なるべく二人を接触させないほうがいいかもしれません。これを繰り返していって近くでも食べ物を食べられるようになったら、しばらく自由にさせておいてもかまいません。また、新しく「猫」が来ることが決まったら、休息場所となる高いところももう一つ作ってあげる必要が出てきます。逃げ場所となる部分がある方が安心します。もちろんトイレももう一つ用意した方がいいでしょう。それぞれが安心できる場所を持ち、食べ物がたっぷりあるということ、飼い主さんの愛情をたくさん貰うことが「猫」にとっては、なによりも幸せでリラックスして生活ができるのです。「猫」によって新しい猫に対する反応は違います。この方法をとってもすぐに二人が慣れてしまう場合もあるでしょうし、時間がかかることもあると思います。でも忘れないでださい。「猫」にものを教える時は、猫のペースで行うということを。
次回は、あちこちで排尿する猫のお話です。


排尿問題の続きです。
あちこちでマーキングを繰り返すようになってしまった「猫」ちゃんのお話です。動物病院での検査でも特に異常が無く、トイレにも問題が無く、新しく「猫」も飼っていないのに、突然あちこちでマーキングを始めました。この場合オスで去勢手術を受けていなければ、まず、去勢手術を受けてください。メスの発情の匂いでマーキングが始まった可能性があります。ですが、去勢や避妊の手術をすでに行っている「猫」であれば、その可能性は少ないでしょう。では、原因は何?ということになります。ここで考えられるのは「不安症」によるものです。物音や、匂い、来客などがきっかけとなり不安が大きくなり、マーキング行動が過剰に行われるということは考えられます。また、室内の環境が大きく変化したり、欲求不満がたまったりすることでもマーキングが過剰に起こることもあります。マーキングがあちこちで始まった場合、「猫」の視点に立って、環境を見直して見てください。何か変化があります。これがわかれば、それを改善していくことでマーキングの回数は減っていきます。例えば、欲求不満が原因であれば、室内の環境を豊かにしてあげるのもいいかもしれません。高いところに登りやすくしてあげたり、遊び道具を増やしたり、それらを使って飼い主さんが遊んであげることも非常に有効です。また、不安が原因であれば、その不安を取り除いてあげるのが一番ですが、この場合薬物療法が必要な場合が多いので注意してください。音や、人に慣れさせようと無理をさせるとよけいに不安が大きくなってしまいます。お薬を飲みながらゆっくり不安を取り除いてあげるのがいいと思います。

このように排泄問題といっても様々な原因や要因があります。「猫」の心の声をきちんと聞いてあげるのも、時には必要なのではないでしょうか?

次回は、猫ちゃんの心の声を聞くのに非常に有効な「ボディポスチャー(体の表現)」を説明したいと思います。
今回から猫の「ボディーポスチャー」のお話です。
ボディーポスチャーって何?と思われる方もいらっしゃると思いますが、平たく言うと「猫のポーズ」や「顔の表情」です。これは、猫の気持ちを知る上で非常に重要です。
まず体のボディーポスチャーから解説していきます。猫の気分を「攻撃と防御」という二つの気分から分けて考えると、非常にわかりやすいです。きっとリラックスしている状態は猫が好きな皆さんが一番よくわかっていらっしゃると思います。
では「攻撃と防御」に話を戻しましょう。まず、攻撃的な気分の時に「猫」はどういったポーズをとるのでしょうか?攻撃的ということは獲物を襲ったり、縄張りをしめすためにいかくするということもあるでしょう。攻撃的な「猫」は尻尾を挙げずに、腰から下をやや持ち上げるようにして、相手をしっかりにらみけます。反対に防御の気持ちが強くなっているときには、体を低くしてなるべくからだを小さくしておこうする傾向があります。そして、防御と攻撃の両方の気持ち、すなわち追い詰められる状況になるという究極の状況では、背中を丸め、尻尾は上がり、四肢をしっかり踏ん張って、相手の出方をうかがいます。この「猫背」の姿勢は「はったり」であることが多く、逃げることもできない状況で攻撃にさらされる時にこの姿勢をとります。また、この場合攻撃をしなければならなくなると非常に激しく、パニックになったように攻撃を繰り返すこともあります。これが、体の表現です。実際には、これらのボディーポスチャーがくるくると変化するのですが、基本的には、「猫は無意味な戦いは避ける」という習性があるので、攻撃に転じることはよほどでないと行いません。しかし、攻撃的な気分になることも確かです。相手によって、状況によって攻撃気分、防御気分、逃走気分という三つのいずれかが優位になり、ボディーポスチャーを決めます。
「猫」の体を観察する時に重要なのは、尻尾と背中です。これが上がっているか、丸めているか、低いか、高いかなどで気持ちが理解しやすくなります。
次回は顔の表情を解説します。


コラムの更新が大変遅れてしまったことをおわび申し上げます。

 「猫」のボディポスチャーの話を続けましょう。今回は顔の表情です。前回、体の表現をお話しました。攻撃的になった時、恐怖を感じた時、警戒の気持ちの時などです(過去のコラムを参照してください)。では、顔はどうでしょうか?
まず、注目してほしいのは、「耳」です。「耳」がどのように見えているかである程度の気持ちを知ることができます。まず、攻撃的な場合だんだん耳の裏側が見えてくるようになります。つまり耳の穴の見えている部分が外側に向いてくるということです。結果的に耳の裏側が正面に見えてくるわけです。人や他の動物、または他の猫に対して、この耳の形を示している時には、注意してください。では、警戒、恐怖になるとどうでしょうか?この場合は耳がだんだん見えなくなっていきます。ものすごく恐怖を感じるような場面では、ほとんど耳がみえなくなってしまうこともあります。また、警戒中は非常に耳を動かすこともあります。いろいろな情報を収集しているようにも見えます。
次に注目したいのは、「瞳孔」です。よく「猫の目のようにくるくる変わる」などの表現がありますが、まさしくこれは「瞳孔」の大きさが変わることを意味しています。これはもちろん光の加減によっても変化しますが、感情によっても当然変化します。攻撃的な場合、特に獲物を狙おうとしているような場合は瞳孔が縮んで眼光がするどくなります。この場合声を出すことはあまりありません。威嚇的な声を出すのは、むしろ恐怖を感じた時です。では、恐怖の場合はどうでしょうか?恐怖を感じると瞳孔が広がっていきます。つまり黒目が大きくなります。この場合「シャーッ!」という声や「フーッ!」という声を出すこともあります。前回のボディポスチャーのお話の時に尻尾を立てるのは怖いときというお話をしましたが、このような顔つきの時にはまさに尻尾を立てていることが多いです。この後の攻撃は非常にパニックになっているので、手がつけられなくなることが多いです。こうなったら、もう何もできないので嵐が過ぎ去るのを待つのみです。
このように、顔や体の表現を見ていくことで「猫」の気持ちの一片を見ることができます。よくその表情や動きを観察してみてください。気持ちが見えてきます。また、近所の「猫」の行動もお暇があればぜひ観察してみてください。とてもおもしろいですよ。フィールドワーク(動物の行動を観察すること)は何もアフリカや熱帯雨林にいかなくても、近所でも行えます。僕も時々行いますが、時々怪しい人物に勘違いされることがあります(笑)。くれぐれも注意しましょう。
「猫」のお話はひとまず終了です。次回からは再び犬の問題に戻ります。
お楽しみに!