コラム

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犬の家畜化と犬種のお話

今日からワンちゃんのことに再びもどりましょう。前回までは精神的な病気のお話が中心でしたが、今回からは本来の「犬」というものにスポットを当てたいとおもます。

犬と人間との歴史は13000年前くらい前からのつきあいだと言われています。もともと氷河期に同じ獲物を争っていた人間と犬の祖先。そこでお互いに手を組んで狩りを始めたのがきっかけではないかと言われています。獲物が少なかった時代ですからお互いの長所をいかしあって狩ができれば非常に効率よいという訳です。つまり最初は利害関係が一致したことから共存していく道をとったと言えるでしょう。そうしていくうちに人間は様々なタイプの犬を作りだしていくことになります。犬の祖先の中には脚がとても早いものも、体が大きいものも、視覚が優れているものも、嗅覚が優れているものも出てきました。こういったもの達を選択的に交配していくことでいわゆる「犬種」と言うものの柱ができていったと考えられています。つまり、「犬」は人間が様々な「仕事」をさせるために作り出してきたと言えます。ですから、今ご自分が飼っているワンちゃんのことを調べてみてください。いったいどんな「仕事」をするために生まれたのかを。そうすることで、その犬種が持っている能力や、最適な環境、運動量などがわかります。お互いにストレス無く生活するためには、まず飼っているワンちゃんのことをよく知ることから始めるのが一番です。

次回は「犬種」についてもう少し詳しくお話します。
「犬」が人間と付き合うようになって様々な仕事を与えられ、「犬種」が作られていきました。犬種に特徴的な毛並み、大きさ、顔形などは理由があってのことです。では、犬種についての長い旅に出てみましょう。


紀元前5000年という昔にすでに「犬」の種類による違いが出来上がっていたという考古学的な証拠もどうやら存在するようです。そして、3000年前には現代に認められるような犬種が絵画などにも登場しています。
アッシリアやバビロニアの彫刻などにはマスチフ型の大型でがっしりとした猟犬が描かれていたり、エジプトではグレイハウンドなどが存在し、ヨーロッパでは多様な体格の犬がいたことを示す跡があり、中国ではペキニーズが西暦700年頃からは存在していたようです。
こういった、仕事に対して目的を持った犬の繁殖はヨーロッパを始めとして世界で何千年もの間行われてきていました。古代ローマでは、家庭犬、牧羊犬、狩猟犬、軍用犬、闘犬などが存在していたようです。
ちなみにマルチーズ型の犬は紀元前数百年頃のギリシャに現れ、数百年後のローマにも現れたということがわかっており、非常に早く普及して行ったと考えられています。
主要な犬種型は非常に早くできあがったと考えられていますが、進化論など遺伝にかんする知識を人間が持ったのはダーウィンの時代、つまり約100年ほど前ということになります。
「犬」が人間と社会生活をおくるようになって、「犬」に対する人間の要求は次第に高度になっていきました。単なる狩猟の仲間から、農業でも、牧羊でも、スポーツとしてのハンティングにも、護衛をするのも、そして、なにより現代では、新しいやくわりである「癒し」にも、「犬」の役割は多様になってきています。
前回にもお話しましたが、犬は人間の要求に合わせて様々な仕事に自らを順応させてきました。
まず、基本型の一つである「スピッツ型」という犬種がいます。これは非常に広い範囲に分布しています。新石器時代の人間と生活をともにしていたということがわかっているようです。また、容姿もオオカミ型との祖先とあまり変化がないということからも古い犬種だと言えるようです。この「スピッツ型」の犬はがっしりとした体格で、意思が強く独立心が旺盛と言う特徴を持っています。しかし、順応性も高いので多彩な使役犬として活躍しています。このスピッツ型には「サモエド」「チャウチャウ」などが含まれます。
「サモエド」はトナカイ用の牧畜犬および、貨物の運搬にロシア北部のサモエド族に活用されていたとされています。サモエド族はトナカイを移動させながら放牧していたので、クマから守るためにサモエドを使用していました。また寒い地方での生活に対して、家の中で「暖房」の役割もしていたようです。「チャウチャウ」は中国が原産で狩猟、番犬、ソリ犬と多様な目的で飼育されています。もともとチャウチャウは嗅覚を使って鳥などを探し出す猟犬として、貴族の間で使われていたようです。そしてこの「チャウチャウ」という名前の由来は「東洋の珍しい装飾品」という意味だそうです。中国からの装飾品の船に一緒に乗っていたことからこの名前になったということです。おもしろいですね。
その次は「マスチフ型」の犬が登場します。この犬種の特徴はなんと言ってもその体格の大きさです。紀元前700年頃のアッシリアの壁画にはライオン狩りに使用されているマスチフの姿があるくらい、猟犬として、あるいは、護衛犬、軍用犬などに使用されてきました。この「マスチフ型」の犬には「グレートデーン」「ボクサー」「セントバーナード」などが含まれます。
「グレートデーン」はイングリッシュマスチフとアイリッシュウルフハウンドの二つの血統を引いているようです。この犬種は非常に有能な狩猟犬としてあるいは軍用犬として仕事をこなしてきました。この「デーン」というのはデンマークという意味ですが今の所原産国はドイツになっています。不思議ですね。「ボクサー」はもともと獲物を追いかけ、ハンターが来るまで口から獲物を放さないというくらい狩猟本能が強い犬です。そのために鼻が低くあごががっしりした形なのです。イギリスでは同じことをさせるために「ブルドッグ」ができましたが、ドイツではマスチフ型のこの犬種の原型を使用していたようです。「セントバーナード」はもともとアルプスのスイスとイタリアの国境を越える宿泊者のためのサンベルナール(英語読みはセントバーナード)という修道院で飼われていた犬でした。ここでの仕事は荷物を運んだり、番犬として仕事をしていました。ここから雪の中から遭難者を見つけると言う能力があることがわかり山岳救助の仕事をいまはしています。
犬種の話はまだまだつづきます。
「犬種」の話をさらに進めましょう。
スピッツ型、マスチフ型の犬種の話の次は、いよいよ「ハウンド」の登場です。古代のエジプト人やイシュメール人達は、すでに猟犬を作り出していたと言われています。この時に活躍していたのは「サイトハウンド」と言って広い草原で獲物を探すため、視覚を使って狩をするタイプの犬種です。このタイプには現在サルーキ、アフガンハウンド、ボルゾイ、グレイハウンドなどがいます。まず、サルーキ。この犬種は古代エジプト人ともに生活していたと言う証拠も見つかっているくらい、とても古い歴史を持つようです。そしてこのサルーキという名前の由来も古代文明のセレウキアから来ています。古代人達はこのサルーキを使って、小動物などの狩りを行っていました。暑い地方で作られた犬種なので寒さには弱く、また少々神経質でもありますが、家の中ではおとなしくしています。ですから活動的な遊び相手という感じではありません。しかし、獲物を追わせると呼んでも帰ってこないというところもあります。さてその次はアフガンハウンドです。この犬種もサルーキと同様非常に歴史が古い犬種です。ですがこちらはアフガンの山岳地域での狩りをしていたため、寒さに対抗するため長い毛並みを持っています。この犬種も家の中ではおとなしく人見知りするような感じですが、やはり狩猟犬らしくそとで何か興味のあるものを見つけると、呼んでも帰って来ないくらい真剣になります。どちらの犬種も運動量がたくさん必要な犬種と言えるでしょう。さあボルゾイです。このボルゾイは前の2種よりはぐっと新しい犬種のようです。もともとはロシアの貴族が交配していた犬種で、15世紀あたりからオオカミ狩りをさせるために体を大きくしたり、皮毛を改良したりといったことを行って現在の容姿になったと考えられています。オオカミを見つけると、その脚の速さで追いつき、飼い主が来るまで噛み付いて放さないといった狩りをしていたようです。このボルゾイも家の中では非常におとなしくマナーの良い犬の代表のようです。ですが、外では非常に活発になるので、散歩と同時に思いっきり走る回るような運動が必要になります。サイトハウンドの最後にグレイハウンドのお話です。この犬種とよく似た犬種が古代エジプトやギリシャなどの壁画に残されているくらい歴史は古いようです。名前の由来としてラテン語でギリシャを表す「グライウス」または上級のと言う意味の「グラディウス」から来ているとも言われています。グレイハウンドはイギリスに渡ってから貴族達の狩りに使われるようになって、急速に普及していったようです。主に野うさぎを狩るために使われて来た為、アメリカにわたってみなさんもご存知のドッグレースの競技犬となったのです。この犬種にはおもしろいあだ名がついています。「もっとも脚の早い、カウチポテト」だそうです。外では、短距離走が得意なくらい活発なのに、家ではソファの上でごろごろしているといった特徴からそう名づけられました。
次回は、ハウンドのお話をさらに続けます。みなさんがよくご存知の「あの犬種」も登場します。


サイトハウンドのお話は前回しました。今回は「セントハウンド」のお話ですセントハウンドは嗅覚を使って狩をする犬種です。このタイプは獲物の臭跡をたどって追いかけ、相手を疲れさせることで狩を成功させるタイプなので、脚が早いということは必要ありません。この犬種には皆さんご存知の「ビーグル」「バセットハウンド」などがいます。このタイプの犬種におこりやすい問題として、「お散歩中の広い喰い」があげられるのも納得です。では、詳しくみていきましょう。「ビーグル」は馬を使わない、野うさぎの狩をする時に使用されていました。他の狩猟犬と比べると体格が小さく持ち運べるくらいの大きさが重宝されていたとされています。この犬種の語源はさまざまで、独特の吠え声を持っていることから、フランス語の古い言葉で「開いたのど」をあらわす言葉だと言う説や、ケルク語由来説、英語由来説など。ですがはっきりとはわかっていないようです。この遠吠えに似た吠え声は、猟師に獲物がいたことをしらせるためであると言われています。また、集団での狩を行うため、比較的他の犬とも仲良くできるタイプです。人間とも社交的な犬です。きちんと運動を与えないといらいらして吠えやすくなったり、攻撃的になることもあるので注意してください。「バセットハウンド」はビーグルと似ていますが、短足で、耳が非常に大きくて長い犬種です。この犬種の名前の由来はフランス語の短いという言葉からきているようです。バセットは足が短く、早く走ることができません。そのため獲物が油断するので、猟師が狙いやすいという利点を持っていました。しかし、その嗅覚はするどく、一度獲物を見つけると、執拗に追い続けます。この犬種はあまり活発な方ではないので、通常のお散歩や庭で遊ばせる程度でもよいです。のんびりした生活を望んでいる方にはおすすめかもしれませんが、自分のすきな匂いに執着したり、頑固な面も持っています。そこを理解して飼ってあげると良いと思います。
地上で獲物を追いかけるタイプの他に、地下に潜って獲物を追いかけるタイプも作られてきました。みなさんご存知の「ダックスフンド」です。ダックスフンドは16世紀には書物の中に登場しています。古い犬種であるといえます。その語源はドイツ語の「アナグマ」から来ています。この犬種は地下を自由に歩き回るため胴が長く、足が短く作られました。そして猟師に獲物を見つけ知らせるためにその場でずっと吠え続けることを行っていました。ですから現在でもこの犬種は吠えやすいのです。また活発動く犬種ですから、」運動も必要です。より小型の動物を狩るために小さいサイズもつくりだされました。様々な気候や風土で仕事をさせるために、皮毛の種類もいろいろ変えてきましたが、1910年頃からしっかりとした皮毛の基準が作られ、スムースはミニチュアピンシャーと、ロングはパピヨンと、ワイヤーはシュザウザーと交配させて作っていくこととなったのです。これらの気質を考えると、運動がやはり必要で、しっかりとコミュニケーションをとることが大切です。他の物音や来客などにも吠えやすく、見知らぬ人には攻撃的になることもあるので注意が必要です。小さい時から吠えにたいするトレーニングをおこなうことで、或る程度改善することができます。
前回、地下に潜って仕事を行うダックスフンドを紹介しましたが、そもそも地下に潜って狩をしていた犬種がいました。それが「テリア種」です。この「テリア種」は以前に紹介した犬種とは違って、初めに地下に潜る小型の犬種が存在していて、その後に地上での仕事をさせるために体格を大きくしたとされています。テリアという名前の由来も地球をあらわす「テラ」からきています。現在のテリア種のほとんどはイギリスで作出されたものですが、特定の地域で限定された形で存在していたため、初期の歴史はほとんどわかっていないというのも現実です。1000年以上も前にエジプト人によって、作られていたということですが、現代に存在しているテリアの種類は最近になって作られてきました。中には、ここ100年程度の歴史しか持っていないものもいるようです。
具体的にテリア種を見ていきましょう。
まず、ウエストハイランドホワイトテリア(通称ウエスティ)です。このテリアはもともと、キツネやアナグマといった動物を狩るために作られていました。今では名前のちがうケアーン、スコティッシュなどのテリアと同じ種だとされていたのですが、犬種に対する意識がたかまり現在の姿と毛並みを持つように交配されたと考えられています。ウエスティは岩と岩ではさまれた人間では到達することのできない、キツネの巣穴に向かって走ることができるように小型にされ、巣穴の中でも小回りがきくように手や脚が短くつくられました。また尻尾が長いのは巣穴の中でキツネにかみついたまま、巣穴から引っ張りだしやすいようにということからのようです。
その次はジャックラッセルテリアです。この犬種の名前の由来は、19世紀のイギリスに住む、ジョンラッセルという人が、馬に乗りながらキツネ狩りをするためにつくりだした犬だからということです。馬とは非常に愛称がよいのですが、非常に運動量が多く必要な犬種です。活発で遊び好きなので都会のアパートなどで暮らすのには不向きといえます。
少しからだの大きなテリアはどうでしょうか?フォックステリアという種は体格が大きなテリアです。この犬種にはスムースとワイヤーという2種が存在しています。日本では、ワイヤーの方がおなじみではないでしょうか?もともとウサギやキツネなどを追いかけ、捕まえるための犬として作られました。非常に活発な犬で、いたずらが好きで、独立心が旺盛です。運動をしっかり与える必要があります。ワイヤーの方がスムースより気が強く喧嘩早いということもいわれているようです。ご注意を!
ベドリントンテリアは中型です。この犬種はイングランド北部のベトリントンという街に住んでいたジョセフアインスレイという人が交配させて作ったとされています。この犬種は羊のようなふわふわとした皮毛が特徴です。ほかのテリアと比べても飼い主や他の人に対する攻撃性は少ないようです。ですが非常に優秀な狩猟犬としてウサギや、キツネなどの狩に使われていました。毛の手入れと、運動をしっかり与えることができる人であれば、非常に良いパートナーとなります。
このほかにも様々なテリアが存在しています。そのほとんどが「獲物を狩る」とい目的を持っているということを忘れないでください。攻撃性や、動くものを追いかける、吠えるといった特徴を持ち合わせています。「かわいい」というだけでは、難しいかもしれません。

次回は、ガンドック(銃を使った狩に使用された犬)の登場です。


犬種の歴史はまだまだ続きます。
特定の目的のために人が選択的に犬を繁殖した結果、「ブリードタイプ」(犬種の基本型)ができました。たとえば、貴族の狩猟に使われるタイプはその個人の趣味により様々な猟犬を生み出され、これらの犬は非常に貴重で貿易にもしようされるようになり、世界に広がっていったと言われています。一方、農村地域で使用される犬はその地方の人々しか使用されなかったため、その地域の特性が強くなったと考えられています。
そして、人間の狩の仕方が変化しました。「銃」を使うようになったのです。これにより犬に求められる能力も変わっていきました。従来の獲物を追いかけ、倒したりするだけではなく、銃を構えている飼い主の所に獲物を追い立てる役目や、的確に獲物の位置を定めたり、獲物を回収するといった仕事です。この「ガンドック」にはどのような種類がいるのでしょうか?

まずは、ポインターです。この犬種は鳥類を見つけること(ポイントするこど)が仕事の犬でした。特に獲物を見つけるとその場でじっとして動かないでいられることが求められた特性です。特に昔は火縄銃だったので撃つまでに時間がかかり、その間ずっと動かないでいられることができたそうです。もし、この犬種を飼おうとするなら毎日の運動はかかせません。そうでないとストレスがたまってたいへんです。
同様の仕事をする犬種にセッターがいます。セッターはポインターと違って獲物を見つけると地面に伏せる(セットする)ことからこの名前になっています。皆さんにおなじみなのはアイリッシュセッターではないでしょうか?この犬種の元はほとんどイングリッシュセッターだといわれているそうですが、ゴードンセッターの血も入っているようです。アイルランドの猟師たちは非常に嗅覚にすぐれていて大型の犬種を必要としていました。ですからあの顔かたちになったといわれています。また、あの独特の飾毛はイバラなどから体を守るためだそうです。この犬種もポインターと同様に運動量が必要な犬種です。飼う時にはしっかり運動できる環境がベストです。

その次はスパニエルです。このスパニエルは厚い体毛と高い活動性をもって様々な木々の間をくぐり抜け、獲物を追い出すことのできる犬種です。スパニエルにはおなじみの犬種がたくさんいます。まず、イングリッシュコッカースパニエルです。この犬種は鳥などの狩をするためにつくられました。雑草の中も走り回れるくらい、大型の獲物も持ち運べるくらいというちょうど良い大きさを持っています。このイングリッシュコッカースパニエルがアメリカに渡って独自に繁殖されたのが、アメリカンコッカースパニエルです。イングリッシュと比べると若干大きさが小さめです、それはうずらなどのちいさな鳥の狩猟に使われたためと言われています。もとは同じ犬種でしたがアメリカもイギリスもどっちも自分のが一番と相容れなかったため、二つの犬種になったともいわれています。また、ちょっと変った歴史のスパニエルがいます。それはキャバリアキングチャールズスパニエルです。この犬種はもともと「癒しのスパニエル」といわれているほどかわいがられていたようです。時代によって鼻がとがっているほうが良いとされたり、平らな方が良いとされたり非常に人間に左右された犬種と言えます。それらのことからアメリカでは1996年にやっと認定されたという歴史も持っています。

ガンドックの話はまだ続きます。
ガンドッグのお話を続けましょう。前回はポインター、セッター、スパニエルのお話をしました。いよいよガンドッグとしてはおそらく皆さん大変よくご存知の犬種「レトリーバー」のお話です。レトリーバーはもともと撃ち落された獲物を回収するという仕事を行う犬でした。レトリーブとは英語で「持ってくる」という意味からもその仕事をこなすことが得意ということがわかります。ではレトリーバーにはどういった種類がいるのでしょうか。まずは「ゴールデンレトリーバー」からいきましょう。ゴールデンは19世紀のイギリスで水中から重い水鳥を回収するために作出されました。筋骨たくましく、単調な作業にもじっと耐えることができるのが特徴です。もともとはフラットコーテッドのなかの「黄色の犬」とされてきましたが、20世紀初頭に「ゴールデンレトリーバー」と犬種として認められました。この犬種は頭が非常にいいためしっかりとしたしつけが必要になります。しっかりといっても決して体罰などは使わず、飼い主さんが主導権をにぎって飼い主さんのために仕事をするという気持ちを大きくさせることで、すばらしい伴侶となりえます。また、小さい子供にも寛容なので安心です。運動量をしっかり与えることも重要なポイントです。これが与えられないと問題行動が現れることが多いので注意しましょう。

「ラブラドールレトリーバー」はどうでしょうか?この犬種はカナダのニューファンドランド諸島に起源をもつ犬種です。もともと19世紀初頭にはラブラドールとは呼ばれていませんでした。様々なニューファンドランドが原型といわれているようです。ニューファンドランドの中でも中型サイズで短い被毛に包まれた黒い犬は、獲物を回収するだけにとどまらず、水の中に入って魚を取ってきたり、時には氷が張っている水にまで飛び込んで小さな漁船を引っ張ったりと、泳ぐことが必要な仕事であればどんなことでもこなせる犬として、漁師に重宝がられていました。ということはそもそもは黒いラブラドールが主流だったということです。19世紀前半にイギリスに渡ったラブラドールもイエローやチョコレートは間引きの対象であったといわれています。現在ではイエローもチョコレートもスタンダードとして認められています。一般的に黒のラブラドールは活動性が高いと言われます。これはより原型に近い遺伝子を持つためではないでしょうか。勇敢に様々な仕事をこなすためにはあれくらいの活動性がないとだめだったのでしょう。ラブラドールも非常に頭がよく、しつけのしやすい犬ですが、運動をしっかり与えないとゴールデンとどうように問題行動をおこしやすい犬種です。気をつけましょう。

「フラットコーテッドレトリーバー」に話題を移しましょう。フラットコーテッドはラブラドールや、ゴールデンとはちがいややほっそりとしています。これはニューファンドランドにポインターやセッターを掛け合わせて作出したためと言われています。最初は波状の毛を持っていましたが、撥水性が悪いということから直毛の犬をかけあわせ「フラットコーテッド」になったといわれています。この犬種は非常に活発で、活動性が高いことが特徴です。1日に1度は物を追いかけたりといった激しい運動が必要です。時には泳がせたりすることもいいでしょう。そうすれば非常にいい伴侶となるはずです。
次回からは家畜の番をする犬の登場です。
今回からは、家畜の番をするワンちゃんのお話です。犬は人間が一番最初に家畜化した動物だといわれています。その後人間はさらにさまざまな動物の家畜化を試みて成功してきました。その結果それらの家畜を管理していく上でまた、犬の力を借りることとなったのです。
この家畜の番をする犬については、その用途によって特徴が違っています。それは、地域によって違う地形、家畜を襲う動物の違い、家畜の管理の仕方の違いによる犬の活用方法の違い、などによって様々に改良される必要があったからです。「フレンチブリアール(またはブリアード)」「ハンガリアンプーリ」「ベルジアンシェパード」の3種はこのような地域差が顕著に出ているといわれています。
フレンチブリアールはフランスのブリー地方が原産といわれ、8世紀頃の絵の中にこの犬に似た犬が描かれているため、非常に歴史の古い犬種であると考えられています。この犬種は、羊の番をするために作られました。必要と有ればオオカミとも戦えるくらいの勇敢さを持っています。その後家畜の飼養形態が変化し家畜を守るということから、管理し、移動させる仕事へと変っていったといわれています。このことから、この犬種を飼う際には非常に運動をさせる必要があります。また他の犬や動物にすこし攻撃的になることもあるので、しっかり社会性を身につけさせる必要があります。
ハンガリアンプーリは、元来小型の牧羊犬でした。そして、羊の背中にのって跳ねながら仕事をこなしていたといわれています。ハンガリーの部族が飼養していたことが起源とされていますが、詳しいことははっきりしていないないようです。その後異種交配から、様々な大きさのプーリが作出されましたが、現在では中型のプーリをスタンダードとするようになっています。この犬種の特徴はなんといってもその皮毛です。独特のドレットヘアーで毛がねじれて、太い束のようになっています。性格は非常に遊び好きで、運動が大好きですから、相当の運動を与えなければ、ストレスがたまってしまうでしょう。
ベルジアンシェパードには、非常に近い4種が存在していると言われています。
・ベルジアンラケノア
・ベルジアングローデネンダール
・ベルジアンタービュレン
・ベルジアンマリノア
の4種です。
1959年にラケノアをのぞく3種が正式に「ベルジアンシェパード」と認められました。
それぞれの特徴は皮毛や毛の色から分類されており、針金のような硬い被毛を持つベルジアンラケノア、短毛のベルジアンマリノア、黒い長毛のベルジアングローネンダール、そして黒以外の毛色を持つ長毛のベルジアンタービュレンとなっています。
どのタイプも非常に優秀な牧羊犬としての能力をもっています。ですから、適切な運動を与えないと、ストレスがたまってしまうでしょう・また、他の犬にたいして、攻撃的になることもあるようです。それは番犬として優秀だからこそと言えるでしょう。
次回はみなさんご存知の牧羊犬のお話です。
牧羊犬のお話を続けましょう。


シープドッグとしは小柄なシェットランドシープドッグのお話。
シェットランド諸島は作物が育ちにくい島だったようです。従って、それを糧にする家畜の体は必然的に小型になっていきました。それによって牧畜作業を手伝う犬も、小さなサイズにとどまったと言われています。家畜の動きを制限する柵がほとんどなかったこの島では、家畜が耕作地に入らないよう管理するために、熟練した牧畜犬が不可欠でした。この仕事を引き受けていたのが、シェットランドシープドッグ通称「シェルティ」です。シェルティは明るく、活発な犬種ですがもともと羊の番をする犬なので、物音に敏感で吠えやすいという特徴を備えています。ですから、飼うときには、運動をしっかり与え、生活の中で聞こえる音については反応しなくても良いということを、わからせる必要があります。現代では牧羊犬としてではなく、聴導犬としての役割が多いということです。

続いては、ボーダーコリーです。ボーダーコリーは牧羊犬の中でも本能的に獲物を追い込む能力が高く、作業能力も高い犬種として有名です。19世紀のイギリスでは様々な牧羊犬が活躍してたようですが、そんな中でもあまり騒がず、吠えたり噛み付いたりすること無くにらみを利かせるだけで羊を統制してしまうという、能力の優れた犬が現れました。それがボーダーコリーの祖先と言われています。また名前の由来もイングランドとスコットランドの境界(ボーダー)に生息していたことからだと言われています。
ボーダーは非常に従順で、頭がよい犬種です。しかし、適切な運動量が与えられないと、室内で吠えたり、攻撃的になるなどの問題が出ることがあります。また、シェルティと同様に、音に対して敏感であったり、騒がしい状態をきらう性質があるので、小さいときからそれらに対して、慣れてもらうようにしておくほうがいいでしょう。
そして、もう一つウェルッシュコーギーです。ウエルッシュコーギー・ペンブローグはイギリスのウエールズ地方で牛のかかとを攻撃しながら集める仕事をこなしていました。もう一つの種であるカーデガンとは歴史が似ています。一時期は混同されていたこともありましたが、今ではしっかりわかれています。ペンブローグの方がカーディガンよりも小柄で、キツネのような顔をしていることが特徴です。またカーディガンは尾が普通の犬のように長いのも特徴です。どちらの犬種も非常に頭がよく、活動的な犬種です。しかし、かかとを攻撃するという特性から、室内でも足元を攻撃するようになる子もいます。また吠えやすいのも特徴です。しっかりとした運動を与え、吠えてはいけないことを小さい時から教える必要があるでしょう。
牧羊犬のグループは非常に能力が高く、頭が良いのが特徴ですが、適切な運動量が与えられて、周りの環境をしっかり理解させないと問題が出ることがありますので、注意してくださいね。

犬種のお話もいよいよトイグループに入ってきました。ここから皆さんが飼っていらっしゃる犬種が多く出てきます。このトイ種が生まれてきた背景には「コンパニオンアニマル」という考え方があるように思います。仕事のパートナーとしてはもちろん、家族の一員として、かけがえのない伴侶としての「犬」の存在が大きくなったということでしょう。このコンパニオンアニマルとしての「犬」に求められるのは、攻撃性が低いこと、体格が小さいこと、そして、なんといっても容姿がかわいいことが一番なのではないでしょうか。

まずは、チワワからいきましょう。
チワワの起源ははっきりしていないようです。というのも中国が原産で、スペイン人の貿易商が広めたというせつと、中南米のテチチという小型で吠えない犬が起源という二つの説があるからです。でも、現在ではこの二つを融合した説が有力です。チワワは小型のためあまり運動量は必要ありません。短い外での散歩や、家の中での遊びでも十分です。でも気分転換のお散歩にはぜひ連れていってください。お外を怖がってしまう子になってしまいます。チワワの気質は、飼い主の愛情を独占したがるというものです。ですから、愛情深くその子だけをかわいがってあげる方が飼ってあげましょう。とても臆病な子や、大胆で攻撃的な子もいます。その子にあった教え方が必要です。

その次はポメラニアンです。
スピッツ族でももっとも小さいポメラニアンは、ドイツとポーランドにまたがるポメラニア地方で、そり犬だった祖先から少しずつ小型化されたとされています。
ポメラニアンは小型ですが活発に動き回る犬種ですから、毎日のお散歩が必要になります。知らない人や、他の犬に攻撃的になることもありますから、小さいときから、慣れてもらうことが大切です。毛並みも特徴的なので、毎日のブラッシングはかかせません。

マルチーズはどうでしょうか。マルチーズはヨーロッパで最初から愛玩犬として作出された犬種です。その起源は非常に古く紀元前1500年ごろマルタ島にフェニキアの水夫たちが持ち込んだ犬が元になっているといわれています。マルタ島からマルチーズという名前がつけられました。かわいらしい容姿とは違って、野性的な面も持ち合わせているので活発に動き回ります。また、他人に対して吠えるようになる子も多いので、注意しましょう。軽めのお散歩で十分ですが、外でもうまく振舞えるように教える必要はあるでしょう。
トイ種のお話はまだまだつづきます。


トイ種のお話を続けましょう。前回はチワワ、マルチーズ、ポメラニアンでした。
今回はまずは、パピヨンからいきましょう。
パピヨンは耳の形が「蝶」にそっくりなので、そこからフランス語の蝶を意味するパピヨンと名づけられました。16世紀ごろのドアーフ・スパニエルが起源と言われているようです。あのルイ14世もパピヨンをこよなく愛していたと言われています。ほんとうにかわいがることを目的として作られた犬種といえるでしょう。性格は活発で、遊びが大好きですが、神経質で臆病なところもあり、中には非常に吠えたり、攻撃的になる子もいます。小さい時からの細かな教え方が必要な犬種ともいえるでしょう。

その次はシーズーです。
シー・ズーは中国と関係の深い犬ですが、その起源は17世紀初めのチベットに遡ります。当時この犬種は、神聖な犬として高い地位を得ていました。
今日広く知られているような独特の発展をとげたのは、西太后(1861~1908))の時代といわれています。 明朝の時代になると、皇族たちが家の中で飼う愛玩犬としてひろく普及していったようです。また、イギリスでは一時期ラサ・アプソという犬種とごちゃごちゃになってしまったというおもしろい歴史もあります。いずれにしても室内でかわいがられることが目的に変りありません。性格は穏やかで、遊び好き、また人とのコミュニケーションを楽しむことが好きです。しかし、少々頑固な面があり、しつけをするのに少し時間がかかることもあります。吠えやすい犬種ではないので静かな生活を望む方には向いています。トリミングが必要な犬種ですが、その際に痛みや恐怖から攻撃的になることもあります。

では、ヨークシャーテリアはどうでしょうか?
もともとヨークシャーテリアは労働者階級の人たちがネズミを獲らせるために、様々なテリア種を交配させて作出した犬種です。ですが、貴族達がその美しさに気がつき、愛玩犬として室内で飼うようになりました。
性格は、テリアの血からもわかるとおり、活発で激しい性格を持っている子が多いようです。また小さくて動くものにすばやく反応し追いかけようとします。ネズミを獲るという仕事柄、攻撃性も持ち合わせています。吠えやすい子もいます。しっかり、いろんなことを教えてあげるととてもいい子になりますが、適切な運動を与えず、あまやかして育ててしまうと、攻撃的で吠えやすい子になる可能性もあります。注意しましよう。
今回のコラムはトイ種のお話ではなく、緊急年末年始特番とでも申しましょうか、どうしてもこの時期にワンちゃんを飼っている方に気をつけてほしいことをお話しようと思います。トイ種のお話は次回に延期いたします(ごめんない)。

みなさんはお正月をどのようにして過ごしますか?外で活動で活動的にと言う方は、ワンちゃんとの楽しい時間を過ごしてください。そのときに注意してもらいたいのは、やはり事故です。交通事故はほとんど飼い主さんの注意があれば防げるものです。安全が確認できない場所でのノーリードは絶対にやめましょう。また、知らないワンちゃん同士も緊張することがあるかもしれません。怪我をしないで楽しくお外で遊ばせてください。

一方、おうちでのんびりという方、こちらにもワンちゃんたちには危険がいっぱいあるんです。まず、お正月という日本人にとっては大切な行事ですが、ワンちゃんたちにとっては、365日のうちの1日にすぎません。なるべくいつもどおりのペースを守ってあげるほうが安心します。お散歩や、食事などの時間や、遊びなども同じにしてあげましょう。
ここでもっとも気をつけて欲しいのは、「人間の食事」です。お正月の三が日や明けた後の動物病院は非常に混むものです。そのほとんどは「吐いたり、下痢をしたり」といった消化器の疾患です。この原因は「食べなれないものを食べた」「異物を飲み込んだ」などといったものが多いのです。元を正していくと人間の生活パターンの変化と「おせち料理」、「飲酒」にあたります。
お正月になると人間は(これは僕がこうなるということで想像しています。そうじゃない方は安心してください)だいたい昼間っからお酒を飲んで、だらだらおせち料理などを食べたりしますね。しかも普段は食卓テーブルで食べているのに、お正月はローテーブルで食べたりするのにも原因がありそうです。普段食べないような時間まで食べ物が出ていたり、低い位置に食べ物があればワンちゃんが食べたくなってもしょうがありません。食べられないようにしてください。また、おせち料理には飾りや、串にささった食べ物が入っているのも危険です。ワンちゃんはその飾りや串ごと食べてしまうので。吐き気が出ても胃からその異物がでなければ、内視鏡や最悪になるとおなかを開ける必要が出てくるかもしれません。なるべく飾りや串は取り除いておく方がいいかもしれません。

楽しいはずのお正月休みが、ワンちゃんの健康被害につながることもあります。十分注意してみなさん元気に年を越してください。
次回もトイ種のお話です。
さあ、再びトイ種のお話にもどりましょう。


今回はまずトイ・プードルからいきましょう。トイ・プードルは鴨猟に飼養されていたスタンダードプードルから改良されて、作出されました。名前の由来もドイツ語の「水たまり、水がはねる」という意味からきているとおり、水中での作業が得意のようです。そのため毛の刈り方も独特で、関節を保護するためにあのような独特のカットになっているようです。もともと使役犬でしたから、非常に利口でトレーニングもしやすい犬種といわれていますが、吠えやすく、神経質になる場合や、ブラッシングやトリミングをいやがり攻撃的になる場合もあります。この犬種はどうしてもトリミングやブラッシングが健康を維持するために必要不可欠なので、小さい時から、慣れさせるトレーニングをおこなうと良いでしょう。けっして痛みを与えないように注意してくださいね。

次はミニチュア・ピンシャーです。ミニチュア・ピンシャーはドーベルマン・ピンシャーを小型化して作られた犬種ではなく、ドーベルマン・ピンシャーよりも古い歴史を持った犬種だそうです。以外ですよね。しかも短毛のテリア、ダックスフンド、イタリアングレーハウンドを掛け合わせているというところも驚きです。まあ、この3種の特徴を兼ね備えているとわかれば、あの気質も納得です。そう、「ミニ・ピン」は非常に活動的で、動き回ることが大好き、いたずらも大好きということになります。まして、トレーニングは他の犬種と比べても、入りづらいということも言われています。ですから、この犬種を飼う方には、自分も活動的で運動量を多く与えられることができ、根気強く教えることのできる方がいいでしょう。静かな生活を望まれる方には不向きかもしれません。また、小さいものを追いかけたがる傾向や、攻撃的になることも多いので、最初に良い信頼関係を築くことが大切といえます。ここがしっかりできればとっても楽しく生活できるでしょう。

最後はイタリアングレーハウンドです。この犬種はいつ小型化されたのか明白ではありません。ですが、この犬種に近い形の犬は2000年以上前にすでにいたという報告もあるようです。
この犬種はサイトハウンドの系統なので、動くものを追いかけたがる傾向があります。運動量は多い方といえますが、気質的にはおとなしく攻撃性は低いといわれています。しかし、他の人や見知らぬものに対しては、警戒し近づきたがらないという面ももっています。寒さには弱いので、注意が必要です。寒さ対策をしながら、運動を与えてあげてください。

犬種の旅も今回で終了です。いろんな犬種がいますが、その犬種の特性を良く知ることがとても大切です。ここで取り上げなかった犬種もまだまだたくさんいます。調べてみるときっとおもしろいと思います。